映画『ハリー・ポッターと死の秘宝』で、ハリーが肌身離さず持ち歩いている鏡の破片。何の説明もなく登場し、時折ハリーが切なげに覗き込むこのアイテムに、「いつ手に入れたの?」「なぜ割れているの?」と疑問を抱いた方も多いのではないでしょうか。
実はこの鏡、亡き名付け親シリウス・ブラックとの絆や、ダンブルドア家との意外な繋がりを示す、物語上極めて重要な伏線なのです。映画ではカットされてしまった涙なしでは語れない経緯や、ハリーの両親が映る「みぞの鏡」との対比など、原作の深い設定を交えて解説します。
- 映画版で説明が省略された鏡の破片の本来の機能と入手経路
- 鏡の向こうで見守っていた人物の正体とハリーを救った経緯
- 原作で描かれた鏡が割れてしまった悲しい理由とシリウスへの後悔
- 物語に登場する別の鏡であるみぞの鏡との決定的な違い
ハリーポッターの鏡の破片の正体とは?両面鏡の入手経路

物語のクライマックスでハリーたちの命を繋ぐことになる鏡の破片。しかし、映画と原作ではその描かれ方に大きな乖離があります。
なぜ映画ではあのように唐突に登場したのか、そして本来この鏡はどのような魔法道具だったのか。まずは、その基本仕様とハリーの手元に渡るまでの経緯を整理します。
映画版ハリーポッターの両面鏡の演出とカットされた設定
映画『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』の冒頭、プリベット通りの自室で荷造りをするハリーが、小さな鏡の破片を見つめるシーンがあります。映画だけを追ってきた視聴者にとって、これは非常に不可解な瞬間でした。過去の映画作品の中で、ハリーがこの鏡を手に入れる場面は一度も描かれていなかったからです。突然現れた謎のアイテムの奥には、どこか見覚えのある「鮮やかな青い目」が一瞬映り込みますが、劇中で明確な説明がなされることは最後までありませんでした。
この説明不足の原因は、映画第5作『不死鳥の騎士団』での大幅なカットにあります。原作ではこの時に鏡を受け取る重要なイベントがあるのですが、映画の尺の都合上、そのシーン自体が削除されてしまいました。
しかし、最終章『死の秘宝』の制作段階になり、この鏡がないと物語が成立しない(マルフォイの館から脱出できない)ことが判明します。
その結果、映画版では「ハリーが以前から持っていたことにして、説明なしで登場させる」という苦肉の策が取られました。原作未読の方にとっては「ご都合主義的なアイテム」に見えてしまうこともありますが、その裏には映画では描ききれなかった、ハリーとシリウスの切ないドラマが隠されているのです。
映画版の注意点
映画『死の秘宝』でハリーが鏡を持っているのは、原作の設定を前提とした演出です。映画『不死鳥の騎士団』には鏡は一切登場しません。
原作におけるハリーポッターの両面鏡の設定とシリウスの遺志
原作小説におけるこの鏡の正体は、「両面鏡(Two-way Mirror)」と呼ばれる魔法道具です。離れた場所にいる者同士が、鏡を通じて顔を見ながら会話ができる、いわば魔法界のテレビ電話のような機能を持っています。
元々は、ハリーの父ジェームズとシリウスがホグワーツ在学中、別々の教室で懲罰を受けている最中にこっそり会話をするために使っていたものでした。
ハリーがこれを受け取ったのは、第5巻『不死鳥の騎士団』のクリスマス休暇明けのことです。シリウスは別れ際、「スネイプがいじめるようなら、これを使って私に知らせろ」と言い残して包みを渡しました。
しかし、ハリーは「お尋ね者」であるシリウスが隠れ家から出てくることを極端に恐れていました。些細な相談でシリウスを危険に晒したくないと考えたハリーは、「絶対に使うものか」と決意し、中身を確認することなくトランクの底に封印してしまったのです。
もしハリーが包みを開け、それが安全な通信機だと知っていれば、後の悲劇は回避できたかもしれません。この「優しさゆえのすれ違い」が、両面鏡のエピソードをより悲劇的なものにしています。
プロテアンの呪文
鏡には「プロテアンの呪文」のような高度な結合魔法が施されており、鏡が割れた後もその魔力は失われず、破片同士での通信が可能でした。
鏡の向こうにいる人物は誰?アバーフォースとの絆

絶体絶命の危機に陥ったハリーが鏡の破片に助けを求めた時、そこには一筋の希望が映し出されました。鏡の向こう側からハリーを見守っていた人物の正体と、なぜ彼が鏡を持っていたのか、その複雑な背景について解説します。
ハリーポッターのアバーフォースと鏡を通じた救出劇
『死の秘宝』でハリーたちがマルフォイの館の地下牢に監禁された際、ハリーは隠し持っていた鏡の破片に「助けて!」と叫びました。その鏡に映っていた青い目の持ち主は、アルバス・ダンブルドアの弟、アバーフォース・ダンブルドアでした。
ハリーはずっと、亡き校長アルバスが見守ってくれていると信じていましたが、実際に鏡越しにハリーを監視し、守っていたのは弟のアバーフォースだったのです。
アバーフォースが鏡を入手したのは、シリウスの死後でした。こそ泥のマンダンガス・フレッチャーがブラック家の屋敷から盗み出した家財道具の中に、シリウスが持っていた「完全な形の両面鏡」が含まれており、それをアバーフォースが買い取っていたのです。
彼は兄アルバスからハリーの使命について聞かされており、兄の死後、その遺志を継ぐ形でハリーを影から支援していました。ハリーのSOSを受け取った彼は、即座に屋敷しもべ妖精のドビーを送り込みました。鏡の破片は、ハリーとアバーフォースを繋ぎ、ドビーという英雄を呼び寄せるための唯一のライフラインだったのです。
救出の判断
アバーフォース自身が動くのではなくドビーを送ったのは、魔法使いの「姿現し」が制限された場所でも、屋敷しもべ妖精なら魔法を使えるという特性を知り尽くしていたからこその的確な判断でした。
鏡が割れてしまった悲しい理由とシリウスへの後悔
ハリーが持っている鏡がなぜ「破片」なのか。その理由には、ハリーの深い後悔と悲しみが刻まれています。
原作においてハリーが初めて包みを開けたのは、シリウスが魔法省神秘部での戦いで命を落とした、まさにその後のことでした。
学期末、寮で荷造りをしていたハリーは未開封の包みを見つけ、それが「シリウスと話せる鏡」だったことを知ります。
「もっと早く包みを開けていれば、シリウスといつでも話せた」「神秘部に行く前にシリウスの無事を確認できた」という事実に打ちのめされたハリーは、亡きシリウスの名前を叫び続けました。
しかし、鏡に映るのは絶望した自分の顔だけ。やり場のない怒りと悲しみに襲われたハリーは、衝動的に鏡をトランクに叩きつけ、粉々に砕いてしまったのです。これが鏡が割れた本当の理由です。
その後、ハリーは砕けた鏡の中から一番大きな破片を拾い上げ、それをシリウスの形見として肌身離さず持ち歩くようになりました。
一度は絶望のあまり破壊した鏡の破片が、最終的にハリーの命を救うことになった展開は、物語における「再生」と「希望」を象徴する屈指の名シーンと言えるでしょう。
別の魔法の鏡「みぞの鏡」との違いと両親の影

ハリー・ポッターシリーズには、両面鏡の他にもう一つ、非常に有名な魔法の鏡が登場します。第1作『賢者の石』の鍵となった「みぞの鏡」です。ここでは、両面鏡とは全く異なるその性質と、ハリーがそこで見たものについて深掘りします。
ハリーポッターのみぞの鏡に両親が映る感動シーン
「みぞの鏡(Mirror of Erised)」は、見る者の心の奥底にある「最も強い切望」を映し出す鏡です。現実の他者と通信する両面鏡とは異なり、この鏡は見る人の内面世界を視覚化します。ホグワーツ入学直後のハリーがこの鏡を覗いた時、
そこに映ったのは、自分の後ろに並ぶ大勢の人々でした。その中心には、自分と同じ目をした母リリーと、同じ髪質の父ジェームズの姿がありました。
物心ついた時から孤独だったハリーにとって、「両親に愛され、家族に囲まれている自分」こそが、世界で最も叶えたい願いだったのです。
ハリーはその幻影に魅了され、毎晩のように鏡の前に通うようになりました。一方、兄弟の影に隠れて生きてきたロンが見たのは「クィディッチのキャプテンになり、英雄になった自分」でした。
このように、みぞの鏡は人によって全く違う「幸せな幻」を見せるのです。それは見る人の心が今何を求めているかを映す、残酷なまでに正直な鏡と言えます。
ハリーポッターのみぞの鏡はどこにある?隠し場所の変遷
当初、みぞの鏡はホグワーツ城内の空き教室に置かれており、ハリーはそこで偶然鏡を発見しました。
しかし、ハリーが鏡の中の幻影に囚われ、現実をおろそかにし始めたことを案じたダンブルドア校長により、鏡は別の場所へと移されました。最終的に設置されたのは、地下深くにある「賢者の石」を守るための最後の部屋でした。
ダンブルドアはこの鏡に高度な魔法をかけ、最強のセキュリティ装置として利用しました。その仕掛けとは、「賢者の石を見つけたいと願うが、使いたいとは思わない者だけが、石を手に入れることができる」というものです。
自分の利益のために石を使おうとするクィレルには、鏡の中に「石を手に入れて喜ぶ自分」しか映りません。しかし、純粋に石を守りたいと願ったハリーだけが、鏡を通じて実物の石をポケットに入れることができました。
この仕掛けは、人の心の欲を利用したダンブルドアの英知の結晶でした。
| 鏡の種類 | 機能 | 象徴するもの |
|---|---|---|
| 両面鏡 | 遠隔地のペアと会話・通信 | 現実的な繋がり、救済 |
| みぞの鏡 | 心の奥底の願望を映す | 内面への逃避、幻想 |
ハリーポッターのみぞの鏡はなぜ魅入るのか?魔法の代償
みぞの鏡の上部には「Erised stra ehru oyt ube cafru oyt on wohsi」という文字が刻まれています。逆から読むと「I show not your face but your heart’s desire(私はあなたの顔ではなく、あなたの心の望みを映す)」となります。
この鏡は、叶わぬ夢を見せ続けることで、見る者を現実から引き剥がし、廃人にしてしまう危険性を持っています。
ダンブルドアは、鏡に夢中になるハリーに対し、「この鏡の前で時を過ごし、正気を失った者もいる」と警告しました。
そして「夢に耽って生きることを忘れ、現実をおろそかにしてはいけない」と諭しました。これはシリーズ全体を通した重要なテーマでもあります。
最終的にハリーが、過去の幻影を見せる「みぞの鏡」ではなく、現実の仲間と繋がる「両面鏡」に助けを求めたことは、彼が過去のトラウマを乗り越え、現実世界で戦う覚悟を決めたという、精神的な成長の証とも言えるでしょう。
ファン必見!ハリーポッターの鏡グッズやレプリカ

物語に登場する魅力的な鏡たちは、現実世界でも人気のコレクターズアイテムとして商品化されています。魔法界の雰囲気を自宅で楽しみたいファンのために、主要なグッズ情報を紹介します。
ノーブルコレクションなどの両面鏡・みぞの鏡グッズ
映画のプロップ(小道具)を忠実に再現した「ノーブルコレクション」からは、本格的な「みぞの鏡」のレプリカが発売されています。
重厚な装飾が施されたこの鏡は、卓上サイズから壁掛け可能な大型サイズまであり、インテリアとして飾るだけで部屋がホグワーツのような空間に変わります。
鏡を覗き込んで、自分の心の奥底にある願いに思いを馳せるのもファンならではの楽しみ方です。
一方、ハリーが持っていた「両面鏡」に関しては、USJのウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッターや、スタジオツアー東京などの公式ショップで、鏡をモチーフにしたキーホルダーやコンパクトミラーが販売されることがあります。
また、熱心なファンの間では、100円ショップの鏡などを加工して、シリウスが持っていた本来の姿や、ハリーが持っていた「割れた破片」を自作(DIY)する楽しみ方も広がっています。
コスプレの小道具として、あるいは部屋のディスプレイとして、自分だけの魔法アイテムを作ってみるのもおすすめです。
(出典:ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 ‐ メイキング・オブ・ハリー・ポッター『公式ショップ情報』)
まとめ:ハリーポッターの鏡の破片の真実
ハリーポッターシリーズに登場する「鏡の破片」は、映画では一見地味なアイテムに見えますが、その背景にはシリウスとの切ない別れと、ダンブルドア家の兄弟の絆が隠されていました。
ハリーが割れた鏡を大切に持ち続けていたのは、それが単なる道具ではなく、亡き名付け親への愛と後悔の結晶だったからです。
そして、その鏡を通じてハリーを見守り続けたアバーフォースの存在は、物語の陰の英雄と呼ぶにふさわしいものでした。
次に映画を見返す際は、ぜひハリーが鏡を取り出すシーンに注目してください。その小さな破片に込められた深い物語を知ることで、作品の感動がより一層深まるはずです。
