宮部みゆきさんの代表作の一つである「三島屋変調百物語」シリーズ。江戸の風情と背筋が凍るような怪談、そして心温まる人情話に、心惹かれている方も多いでしょう。しかし、シリーズ作品で「どの順番で読めばいいの?」「登場人物やあらすじが知りたい」といった疑問も浮かびます。
この記事では、シリーズの文庫本情報から、各作品のあらすじ、そして主な登場人物まで詳しく解説します。さらに、待望のシリーズ新刊や続編の情報にも触れ、宮部みゆき三島屋シリーズの読む順番に関するあらゆる疑問にお応えしています。
- 三島屋シリーズの最適な読む順番と物語の繋がり
- シリーズ全10作品のあらすじとそれぞれの魅力
- コミック・ドラマ・オーディオブックなど小説以外の楽しみ方
宮部みゆき「三島屋シリーズ」のおすすめの順番
宮部みゆきさんがライフワークとして、2006年から精力的に書き継いでいる江戸怪談の傑作「三島屋変調百物語」シリーズ。ここでは、シリーズの基本情報から、物語を最大限に楽しむための読み方まで、詳しく掘り下げていきます。
三島屋変調百物語シリーズとは?概要と魅力を紹介

「三島屋変調百物語」シリーズは、江戸・神田三島町で評判の袋物屋「三島屋」の奥座敷「黒白の間」を舞台に繰り広げられる、風変わりな百物語を描いた連作短編集です。
2008年に一巻「おそろし」が刊行され、2025年現在は10巻まで刊行されています。
最大の特徴は、「語り手は一人、聞き手も一人。ここで語られた話は決して外には漏らさない」という厳格なルール。この決まり事があるからこそ、語り手は誰にも言えなかった恐ろしい体験や不思議な出来事を、心の澱を流すように語り捨てていきます。
物語は単なる怪談集に留まりません。語られる怪異譚を通して、人間の持つ弱さ、強さ、悲しみ、そして愛情といった普遍的なテーマが深く描かれています。宮部みゆきさん自身が「いつも自分の一番そばにある、原点に近い仕事」と語るように、作家の魂が込められた特別なシリーズであり、その世界観は多くの読者を魅了し、シリーズ累計発行部数は300万部を突破しています。
シリーズの3つの魅力
- ただ怖いだけではない、心に染みる人情怪談
背筋が凍るような怪談の中にも、必ず登場人物たちの切ない人生や温かい人情が描かれています。恐怖の先に感動や救いがある点こそ、本シリーズ最大の魅力です。 - 聞き手の成長と共に進む、重層的な物語
物語は、聞き手であるおちか、そして富次郎の成長譚でもあります。彼らが人々の話に耳を傾け、自身の運命と向き合っていく姿が、シリーズ全体を貫く大きな縦軸となっています。 - 江戸の暮らしや文化が息づくリアルな世界観
袋物屋の商いや、江戸市井の人々の暮らしぶりが丁寧に描かれており、読者を自然に江戸時代へと誘います。豊かな時代描写が、物語に圧倒的なリアリティを与えています。
読む順番のポイントとストーリーの繋がりは?

物語を最も深く味わうための結論として、三島屋シリーズは第1作『おそろし』から刊行された順番に読み進めるのが最適です。
順番 | タイトル | 刊行年(単行本) | 文庫化 |
---|---|---|---|
1 | おそろし 三島屋変調百物語事始 | 2008年 | ◯ |
2 | あんじゅう 三島屋変調百物語事続 | 2010年 | ◯ |
3 | 泣き童子 三島屋変調百物語参之続 | 2013年 | ◯ |
4 | 三鬼 三島屋変調百物語四之続 | 2016年 | ◯ |
5 | あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続 | 2018年 | ◯ |
6 | 黒武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続 | 2019年 | ◯ |
7 | 魂手形 三島屋変調百物語七之続 | 2021年 | ◯ |
8 | よって件のごとし 三島屋変調百物語八之続 | 2022年 | ◯ |
9 | 青瓜不動 三島屋変調百物語九之続 | 2023年 | ◯ |
10 | 猫の刻参り 三島屋変調百物語拾之続 | 2025年 | ー |
もちろん、各巻に収録されている怪談はそれぞれ独立しており、どの作品から読んでも一話完結の物語として楽しむことは可能です。
しかし、このシリーズのもう一つの大きな魅力は、聞き手である主人公たちの「人生の物語」が、シリーズ全体を通してゆるやかに、しかし確実に進行していく点にあります。
刊行順で読むべき理由
物語は単なる怪談の連なりではありません。聞き手であるおちかや、後にその役目を引き継ぐ富次郎の成長物語という側面も色濃く持っています。登場人物たちが経験する出会いや別れ、そして過去の出来事が伏線のように後の物語に影響を与えることもあるため、時系列に沿って読むことで、物語の奥行きやキャラクターへの感情入移入が格段に増します。
例えば、第4作『三鬼』で後のキーパーソンとなる人物が登場し、物語は第5作『あやかし草紙』で大きな節目を迎えます。ここで聞き手の交代というシリーズの大きな転機が訪れるため、この感動を味わうためにも、ぜひ順番に読み進めてみてください。
シリーズ全作品のあらすじ・おすすめポイント紹介

ここでは、現在刊行されている「三島屋変調百物語」シリーズ全10作品のあらすじと、それぞれの見どころを順番にご紹介します。どの物語も宮部みゆきワールド全開の、恐ろしくも美しい世界が広がっています。
第1作『おそろし 三島屋変調百物語事始』

江戸の不思議話が、心を閉ざした娘の魂を溶かしてゆく。
ある事件で心に傷を負い、江戸の叔父夫婦のもとで暮らす17歳のおちか。叔父の計らいで、客の不思議な話を聞く「聞き手」となる。客が語る怪異譚に耳を傾けるうち、固く閉ざされた心が次第に解きほぐされていく。シリーズの原点にして、おちか自身の物語が明かされる重要な一冊。
すべての始まりである本作は、シリーズの世界観と主要人物を知る上で必読。語られる怪談の恐ろしさはもちろん、おちかがなぜ心を閉ざしているのか、その理由が明かされる最終話「家鳴り」は圧巻。悲しくも美しい物語の幕開けをぜひ体験してください。
出版年 | 2008年 |
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小説ジャンル | 時代小説、怪談 |
メディア化情報 | 2014年 NHK BSプレミアムにてドラマ化 |
第2作『あんじゅう 三島屋変調百物語事続』

人を恋いながら人のそばでは生きられない、切ない化け物の物語。
百物語の聞き手を続けるおちかのもとに、新たな語り手が訪れる。深考塾の若先生が語ったのは、紫陽花屋敷に棲むという暗獣“くろすけ”にまつわる物語。人を慕いながらも、その身に宿した力ゆえに人と共に生きることが叶わない、哀しい化け物の顛末とは。不思議で切ない四編を収録。
前作に続き、恐ろしくもどこか物悲しい物語が読者の心を打つ。特に、暗獣“くろすけ”のキャラクター造形は秀逸。その愛らしさと運命の哀しさに、涙した読者も少なくないでしょう。宮部みゆきが描く「人ならざるもの」の魅力が詰まっています。
出版年 | 2010年 |
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小説ジャンル | 時代小説、怪談 |
第3作『泣き童子 三島屋変調百物語参之続』

決して泣きやまぬ赤子に隠された、恐ろしくも哀しい秘密とは。
変わり百物語が始まって一年。おちかの傷も癒えつつあったある日、骸骨のように痩せた男が三島屋を訪れる。彼が語り始めたのは、ある特定の人物の前でだけ、決して泣きやまぬ赤子の話。その異様さの裏に隠された、人間の深い業と恐るべき秘密が、やがて明らかになる。
人間の心の闇や執念に焦点を当てた物語が多く、シリーズの中でも特にホラー要素の強い一冊。表題作「泣き童子」のじわりと迫る恐怖は格別です。怪談のバリエーションが豊かで、宮部みゆきの語りの巧みさを存分に味わうことができます。
出版年 | 2013年 |
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小説ジャンル | 時代小説、怪談 |
第4作『三鬼 三島屋変調百物語四之続』

寒村に潜む鬼の秘密。人が人でなくなる、その境界線を描く。
今回の語り手は、山陰の小藩で江戸家老を務めた武士。彼が若き日に赴任した寒村には、決して犯してはならない掟と、それに纏わる鬼の秘密が隠されていた。聞き役におちかの従兄・富次郎も加わり、物語は新たな深みへ。絶品の弁当屋が夏に休業する理由など、多彩な四編を収録。
後の二代目聞き手となる富次郎が初登場する、ファンにとって重要な一冊。表題作「三鬼」では、閉鎖的な共同体が生み出す狂気と悲劇が描かれています。社会派ミステリーのような読み応えがあり、ここから物語が大きく動き出す予感に満ちています。
出版年 | 2016年 |
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小説ジャンル | 時代小説、怪談 |
第5作『あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続』

聞き手・おちかの卒業。第一期、感動の完結編!
悲しみを乗り越え、聞き手として成長したおちか。彼女が迎える新たな語り手は、なじみの貸本屋の若旦那・勘一。彼が語った、読む者の寿命を知らせる不思議な冊子の物語は、おちか自身の運命を大きく動かす引き金となる。珠玉の五編を収録した、シリーズ第一期の集大成。
おちかの物語が大きな節目を迎える、シリーズ必読の巻。彼女が下す重大な決断と、その選択に至るまでの心の軌跡が丁寧に描かれており、シリーズを最初から読んできた読者にとっては感涙必至。感動的なフィナーレと、次なる物語への希望を感じさせます。
出版年 | 2018年 |
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小説ジャンル | 時代小説、怪談 |
第6作『黒武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続』

聞き手は次男・富次郎へ。宮部流江戸怪談、新章開幕!
おちかの嫁入りによって、百物語の聞き手は三島屋の次男・富次郎へと引き継がれた。甘いもの好きで心優しい「小旦那」富次郎のもとに持ち込まれた謎の半天。それをきっかけに語られたのは、人々を吸い寄せ破滅させるという怪しい屋敷「黒武御神火御殿」の顛末だった。新たな百物語の幕が開く。
聞き手が富次郎に交代し、シリーズは新たなステージへ。おちかとは異なる魅力を持つ富次郎の、誠実で優しい聞き手ぶりが新鮮です。表題作の屋敷にまつわる怪談は、シリーズ屈指の恐ろしさ。新章の幕開けにふさわしい、読み応えのある一冊。
出版年 | 2019年 |
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小説ジャンル | 時代小説、怪談 |
第7作『魂手形 三島屋変調百物語七之続』

この世の業を集める百物語。一生に一度きりの「物語り」を続けましょう。
二代目聞き手として板についてきた富次郎。彼の元を、少年時代を木賃宿で過ごした老人が訪れる。老人が出会った、迷える魂の水先案内を務める不思議な水夫とは。ほか、美丈夫の武士が語る故郷の奇妙な火消しの話など、人の念の恐ろしさと哀しさを描く三編を収録。三島屋には吉報も舞い込む。
富次郎の聞き手としての成長と、彼を取り巻く三島屋の人々の日常がより深く描かれています。おちかの嬉しい知らせも明かされ、シリーズファンにとっては喜びもひとしお。怪談の恐ろしさと、家族の温かさの対比が印象的な一冊です。
出版年 | 2021年 |
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小説ジャンル | 時代小説、怪談 |
第8作『よって件のごとし 三島屋変調百物語八之続』

村を喰らう「ひとでなし」の恐怖。語られる怪談は人の心を解きほぐす。
従姉妹のおちかの出産を控え、富次郎はしばらく百物語を休むことを決意。その休止前、最後に語り手となったのは商人風の老人とその妻。老人が静かに語り始めたのは、かつて暮らした村を恐怖に陥れた「ひとでなし」という存在にまつわる、おぞましくも哀しい事件の顛末だった。
表題作「よって件のごとし」が強烈なインパクトを残します。「件(くだん)」という日本の有名な妖怪伝承をモチーフに、人間の差別意識や集団心理の恐ろしさを描き切った物語は、読後に深い問いを残します。宮部みゆきの社会を見る鋭い視線が光る傑作。
出版年 | 2022年 |
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小説ジャンル | 時代小説、怪談 |
第9作『青瓜不動 三島屋変調百物語九之続』

おちか、ついに母となる。恐ろしくも温かい百物語が、富次郎の心を動かす。
初代聞き手・おちかの出産が迫り、三島屋は祝賀と緊張感に包まれる。そんな中、土の匂いをまとった女が訪れ、行くあてのない女たちのために土から生まれたという「うりんぼ様」と呼ばれる不動明王像の話を語り始める。語られる物語に心を動かされ、富次郎は自らの将来についてある決意を固める。
おちかの出産という、シリーズにとって非常に大きな出来事が描かれる。安産を願う家族の愛情と、語られる怪談の恐ろしさが交錯し、物語に独特の深みを与えています。富次郎の人生においても重要な転機となる巻であり、今後の展開から目が離せません。
出版年 | 2023年 |
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小説ジャンル | 時代小説、怪談 |
第10作『猫の刻参り 三島屋変調百物語拾之続』

化け猫、河童、山姥。狂気に満ちた苦界を生きる、化生の者たちの怪奇譚。
富次郎が聞くのは、飼い主の恨みを晴らす化け猫、命懸けで悪党に挑む河童、懺悔を泣き叫ぶ山姥など、これまで以上に異形のものたちの物語。一方、三島屋では跡取りである兄・伊一郎の縁談を巡って大騒動が巻き起こる。富次郎は聞き手として、そして三島屋の一員として、大きな渦に立ち向かう。
記念すべきシリーズ第10作は、妖怪譚の色合いが濃く、エンターテインメント性に溢れている。それと同時に、三島屋の家族の物語が大きく動き出し、富次郎の個人的な成長も描かれます。怪談と人情ドラマが絶妙なバランスで融合した、最新刊にして最高傑作の呼び声も高い一冊。
出版年 | 2025年 |
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小説ジャンル | 時代小説、怪談 |
物語を彩る主な登場人物を紹介

「三島屋変調百物語」シリーズの深い魅力は、練り込まれた怪談だけでなく、悩み、成長していく生き生きとした登場人物たちによって支えられています。ここでは、物語の軸となる中心人物たちを、より詳しくご紹介します。
おちか
シリーズ初代聞き手。
川崎宿で評判の旅籠「丸千」の一人娘として何不自由なく育ちましたが、祝言を間近に控えたある日、許嫁にまつわる悲劇的な事件に巻き込まれます。そのショックから心を閉ざし、江戸で袋物屋「三島屋」を営む叔父夫婦のもとへ行儀見習いの名目で身を寄せます。17歳の時、叔父・伊兵衛の提案で百物語の聞き手となり、人々の話に真摯に耳を傾けることで、自身の心の傷と向き合い、少しずつ魂を再生させていきます。思慮深く、芯の強い女性であり、彼女の成長譚はシリーズ第一期の核となっています。
富次郎(とみじろう)
シリーズ二代目聞き手。
三島屋の主人・伊兵衛の次男で、おちかの従兄弟にあたります。聡明で働き者の兄・伊一郎が跡継ぎの「若旦那」であるため、自分は気楽な立場の「小旦那」だと称しています。明るく心優しい好青年で、甘いもの好きという親しみやすい一面も。奉公先でのトラブルがきっかけで三島屋に戻り、おちかが嫁いだ後、百物語の聞き手を引き継ぎます。彼の誠実さと共感能力の高さは、語り手たちに新たな形の安らぎを与えています。
伊兵衛(いへえ)
おちかの叔父であり、江戸・神田三島町に店を構える袋物屋「三島屋」の主人。 振り売りから身を起こし、一代で店を江戸でも評判の店に育て上げた辣腕の商人です。商売には厳しいですが、家族への愛情は人一倍深く、心を閉ざした姪のおちかを常に案じています。息抜きになればと「変わり百物語」を思いついた発案者であり、物語のすべての始まりを作った人物でもあります。厳格さと温情を併せ持つ、一家の大黒柱です。
三島屋のその他の人々
物語を支える脇役たちも魅力的です。伊兵衛の妻で、常におちかを温かく見守るお民、三島屋に長年仕える古参女中のおしま、そして強い霊感を持ち、聞き手の守り役として控えるお勝など、彼女たちの存在が物語に温かみと奥行きを与えています。
作品を耳から楽しむ! オーディオブックで全8作品が配信中!

「三島屋変調百物語」シリーズは、Amazonのオーディオブック「Audible(オーディブル)」でシリーズの8作品目まで配信されています。
プロの声優・波乃りんによる情緒豊かな朗読は、江戸の町のざわめきや、怪談が語られる「黒白の間」の静謐な空気、そして登場人物たちの息遣いまでをもリアルに伝えてくれます。
文字で追うのとは一味も二味も違う、臨場感あふれる読書体験が可能です。
Audible お客様の声(「おそろし 三島屋変調百物語事始」)
(405レビュー)2025.10月時点読んでも聴いても楽しい。
読んでいた時と違和感無しのナレーションでした。変調百物語は一通り読みましたが、是非オーディブルで聴きなおしたい。素晴らしい。
ストーリーはもちろん、ナレーションの方の声質、抑揚のつけ方、演技まで完璧です。「おそろし 三島屋変調百物語事始」お客様の声 | Audible朗読の醍醐味
本でも二度ほど読みましたが、まるでお芝居を観ているようなひとときでした。
Audibleは今なら1ヶ月間の無料体験キャンペーン実施中です。
ぜひこの機会に、耳で聴く読書・オーディオブックを体験してみてください。
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宮部みゆき「三島屋シリーズ」の順番 | 周辺情報をもっと詳しく
ここでは、三島屋シリーズをさらに多角的に楽しむための情報をまとめました。最新の続編情報から、コミック、ドラマまで、シリーズの広がりをご紹介します。
待望のシリーズ新刊・続編情報


三島屋シリーズのファンにとって最も嬉しいニュースは、物語がまだ続いているということでしょう。最新刊は、2025年1月17日に新潮社から刊行された『猫の刻参り 三島屋変調百物語拾之続』です。
この第10作では、二代目聞き手である富次郎のもとに、これまで以上に奇怪な話が持ち込まれます。飼い主の恨みを晴らす化け猫や、悪党壊滅に命懸けで挑む河童など、人ならざる「化生のものども」が織りなす怪奇譚が展開されます。それと同時に、三島屋の跡取りである兄・伊一郎の縁談を巡る大騒動が描かれ、富次郎自身の物語も大きく動き出します。
宮部みゆきさんはこのシリーズをライフワークと位置付けており、九十九話を書き上げることが目標だと公言しています。物語はまだ道半ば。富次郎が聞き手としてどのように成長していくのか、三島屋の人々の行く末はどうなるのか、今後の展開からますます目が離せません。
コミック版で読む三島屋シリーズ


三島屋シリーズの独特な世界観は、漫画というメディアでも表現されています。宮本福助さんの作画によるコミカライズ版が、KADOKAWAのWebコミックサイト「COMIC BRIDGE」にて連載され、単行本も刊行されています。
漫画版は、物語の導入となる第1作『おそろし』の内容を基に描かれています。原作の持つ静かでじわりと迫る恐怖の雰囲気を、美麗かつ繊細な筆致で見事に表現しており、小説ファンからも高い評価を得ています。活字が苦手な方でも、まずはこちらから三島屋の世界に触れてみるのも良いでしょう。おちかの憂いを帯びた表情や、語り手たちの緊迫した様子が絵で表現されることで、小説とは異なる臨場感と没入感を味わうことができます。
電子書籍版<合本版>も刊行


「すぐに読み始めたい」「たくさんの本を場所を取らずに保管したい」という現代の読書スタイルに、電子書籍は最適です。三島屋シリーズは各電子書籍ストアでも配信されています。
特に注目なのが、シリーズ第一期(第1作~第5作)をまとめた『三島屋変調百物語 おちか編5冊合本版』です。個別に購入するよりもお得になっている場合が多く、おちかが聞き手を務めた物語を一気に楽しみたい方には最適です。また、電子書籍版限定で宮部みゆきさんによるあとがきが収録されていることもあり、ファンには見逃せない特典となっています。
テレビドラマもチェック


シリーズ第1作『おそろし』は、2014年にNHK BSプレミアムの「ザ・プレミアム」枠にて『おそろし〜三島屋変調百物語』のタイトルで、全5回のドラマとして放送されました。
主人公のおちか役を、透明感あふれる演技で人気の女優・波瑠さんが務め、その繊細な表情が、心を閉ざした少女の複雑な内面を見事に表現していると大きな話題になりました。また、叔父・伊兵衛役を佐野史郎さん、女中頭・おしま役を宮崎美子さんが演じるなど、脇を固める実力派俳優たちの重厚な演技も見どころです。
項目 | 情報 |
---|---|
タイトル | おそろし〜三島屋変調百物語 |
放送局 | NHK BSプレミアム |
放送年 | 2014年 |
主演 | 波瑠(おちか役) |
視聴方法 | NHKオンデマンドなどで配信中 |
映像化によって、江戸時代の町並みや人々の暮らしがリアルに再現され、物語への没入感を一層深めてくれます。原作の持つ静かで文学的な雰囲気を大切にしながら作られており、小説を読んだ後に視聴すると、また新たな発見があるかもしれません。未見の方は、ぜひチェックしてみてください。
宮部みゆきの代表的な時代小説のシリーズ作品


三島屋シリーズを読んで宮部みゆきさんの時代小説の世界に魅了されたなら、他のシリーズ作品に手を伸ばしてみるのもおすすめです。それぞれに異なる魅力があり、江戸という時代の多様な貌(かお)を楽しむことができます。
おすすめの他シリーズ
- 茂七親分シリーズ
『本所深川ふしぎ草紙』から始まる、岡っ引きの茂七親分が活躍する人情ミステリーの傑作。江戸の下町で起こる不思議な事件を、人情味あふれる裁きで解決していきます。怪異と謎解きが融合した、宮部時代小説の原点ともいえるシリーズです。 - ぼんくらシリーズ
“ぼんくら”とあだ名される同心・井筒平四郎が、甥で切れ者の弓之助とともに江戸の難事件に挑みます。三島屋シリーズとは異なり、捕物帖としての本格的な謎解きの面白さが際立ちます。 - きたきた捕物帖シリーズ
『ぼんくら』シリーズの登場人物たちが歳を重ねた未来を描く物語。岡っ引き見習いの北一と謎多き相棒・喜多次の「きたきたコンビ」が活躍します。シリーズ間の繋がりもファンにはたまらない魅力です。
これらの作品も、江戸の市井に生きる名もなき人々の喜びや悲しみを丁寧に描いている点は共通しています。三島屋シリーズとはまた違った感動が味わえます。
宮部みゆき「三島屋シリーズ」は刊行順がおすすめ
この記事では、宮部みゆきさんの人気時代小説「三島屋変調百物語」シリーズについて、その魅力と楽しむための情報をご紹介しました。シリーズの概要や各作品のあらすじ、そして物語を彩る主な登場人物を知ることで、これから読み始める方も、より深く物語の世界に没入できるはずです。結論として、このシリーズの読む順番は、登場人物の心の変遷を丁寧に追体験できる刊行順が最適です。
また、小説だけでなく、オーディオブックやテレビドラマ、コミックといった様々なメディアで楽しめるのも、本シリーズの大きな魅力でしょう。文庫本はもちろん、電子書籍の合本版を利用すれば、第一期の物語を手軽に一気読みすることも可能です。
- 三島屋シリーズは刊行順に読むのが最適
- 聞き手はおちかから富次郎へと引き継がれる
- 怖い話だけでなく心温まる人情話も魅力
- 最新刊は『猫の刻参り 三島屋変調百物語拾之続』
- ドラマやコミックなどメディア展開も豊富
- 三島屋シリーズは宮部みゆきのライフワークともいえる代表作