慶次郎縁側日記の読む順番は?小説・ドラマ別に徹底解説

慶次郎縁側日記の読む順番は?小説・ドラマ別に徹底解説

北原亞以子さんの人気時代小説「慶次郎縁側日記」。江戸の市井に生きる人々の哀歓を温かい筆致で描いたこのシリーズは、多くの読者を魅了し続けています。しかし、短編集や長編、外伝など作品数が多いため「どの順番で読めばいいの?」と迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。また、高橋英樹さん主演で映像化されたテレビドラマ版から作品の世界に触れたい、という方もいるでしょう。

この記事では、これから「慶次郎縁側日記」の世界を旅するあなたのために、小説シリーズとテレビドラマ版、それぞれの最適な順番を分かりやすく、そして深く解説します。作品ごとの繋がりや時代背景をしっかりと理解することで、物語を何倍も深く味わうことができるはずです。この記事を読めば、あなたにぴったりの楽しみ方がきっと見つかります。

この記事でわかること
  • 小説「慶次郎縁側日記」シリーズの背景と最適な読む順番
  • シリーズ全作品の出版順と、それぞれのあらすじや見どころ
  • 高橋英樹さん主演、NHK制作のテレビドラマ版を見る順番と概要
  • ドラマのDVD情報や最新の配信・再放送情報
目次

小説「慶次郎縁側日記」シリーズのおすすめの読む順番

まずは、物語の原点である小説シリーズの読む順番から見ていきましょう。このシリーズは、単に事件を解決する捕物帳ではありません。主人公・慶次郎の心の変遷や、彼を取り巻く人々の成長が、時間をかけて丁寧に描かれています。作品ごとの繋がりや時系列を把握することで、登場人物たちの心情の移り変わりや物語の深みをより一層感じることができます。あなたに合った楽しみ方を見つける手助けになれば幸いです。

慶次郎縁側日記シリーズとは?

慶次郎縁側日記シリーズとは?
イメージ画像:エンタメMAG

「慶次郎縁側日記」は、直木賞作家・北原亞以子さんによる、江戸時代後期を舞台にした連作時代小説シリーズです。主人公は、元南町奉行所の定町廻り同心であった森口慶次郎。ある悲しい事件をきっかけに同心の職を辞し、江戸・根岸の里で商家の寮番(管理人)として静かな隠居生活を送っています。

しかし、同心時代に「仏の慶次郎」と呼ばれたその人柄を慕い、彼の周りには様々な悩みや揉め事を抱えた人々が絶えません。慶次郎は、その深い洞察力と温かい人情で、事件の裏に隠された人々の心を解きほぐしていきます。派手な立ち回りや難解なトリックが登場するわけではありませんが、江戸に生きる庶民の喜びや悲しみ、そして心の機微を丁寧に描き出した珠玉の人情時代小説として、世代を超えて高い評価を得ています。

シリーズの始まりと発展

この壮大なシリーズの原点は、1994年に新潮社から刊行された短編集『その夜の雪』に収録された一編でした。この物語が読者の間で大きな評判を呼び、その直接的な後日譚となる長編『雪の夜のあと』(1997年)が読売新聞社から刊行されます。そして翌1998年、正式なシリーズ第一作『傷』が発表され、2014年の最終巻『乗合船』に至るまで、全16巻(+外伝1巻)にも及ぶ大人気シリーズへと発展していったのです。

【出版順】シリーズ全作品一覧 | 文庫化の有無も

【出版順】シリーズ全作品一覧 | 文庫化の有無も
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「慶次郎縁側日記」シリーズは、短編集15巻、長編1巻、そして外伝1巻の全17作品で構成されています。ここでは、シリーズの全体像を把握するために、全作品を出版された順番にご紹介します。ほとんどの作品が新潮文庫から刊行されており、主要な電子書籍ストアでも手軽に読むことが可能です。

出版順タイトル刊行年(単行本)文庫版
その夜の雪1994年あり
雪の夜のあと1997年あり(朝日文庫)
11998年あり
2再会1999年あり
3おひде2000年あり
42000年あり
52002年あり
6隅田川2002年あり
7やさしい男2003年あり
番外編脇役 慶次郎覚書2003年あり
8赤まんま2004年あり
9夢のなか2005年あり
10ほたる2006年あり
11月明かり(長編)2007年あり
12白雨2008年あり
13あした2012年あり
14祭りの日2013年あり
15雨の底2013年あり
16乗合船2014年あり

『雪の夜のあと』の重要性について

『雪の夜のあと』は、シリーズ全体のテーマに関わる極めて重要な長編ですが、出版社が異なるため新潮文庫のシリーズには含まれていません。単行本刊行後は長らく入手困難な「幻の一冊」とされていましたが、朝日新聞出版の公式サイトでも紹介されている通り、現在は朝日文庫から復刊されています。シリーズを深く味わうためには必読の一冊ですので、ぜひ探してみてください。

おすすめの読む順番

おすすめの読む順番
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結論から言うと、「慶次郎縁側日記」シリーズは基本的に出版順に読んでいくのが最もおすすめです。

なぜなら、物語の中の時間が刊行順とほぼ同じように流れていき、慶次郎やその周りの人々の年齢や関係性が少しずつ変化していくからです。

この時間の流れに沿って読むことで、登場人物たちの成長や変化を自然に受け止め、感情移入しやすくなります。ただし、これから初めてシリーズに触れる方には、より深く物語を理解するための、もう一歩踏み込んだ読み方をおすすめします。

【最重要】物語の起点となる2作品から読む!

もしあなたがこれからシリーズを読み始めるなら、以下の2作品から読み始めることをおすすめします。これはシリーズ全体の印象を左右する、重要なポイントです。

  1. 『その夜の雪』(新潮文庫)に収録されている短編「その夜の雪」
  2. 『雪の夜のあと』(朝日文庫)

前述の通り、短編「その夜の雪」では、慶次郎がまだ現役の同心であり、彼が心を痛め隠居する直接的なきっかけとなった悲しい事件が描かれています。そして長編『雪の夜のあと』は、その事件から5年後の物語。慶次郎の心の傷や人間性が深く掘り下げられ、彼が過去とどう向き合っていくのかが描かれます。この2作品を最初に読むことで、なぜ慶次郎が「仏」と呼ばれるほどの深い優しさを持つに至ったのか、その根源にある哀しみと強さを理解することができるのです。

この2作品を読んだ後、『傷』から始まる新潮文庫のシリーズを順番に読み進めていけば、慶次郎の言葉の重みや、彼の選択の意味を、より深く感じ取ることができるでしょう。

「いきなり全巻は大変…」と感じる方は、まずこの起点となる2作品だけでも手に取ってみてください。それだけでも、森口慶次郎という人物の魅力にどっぷりと浸かれるはずです。その後、気になったエピソードが収録されている巻からつまみ読みするのも、このシリーズならではの楽しみ方ですよ。

全小説作品のあらすじと登場人物

全小説作品のあらすじと登場人物
イメージ画像:エンタメMAG

ここでは、シリーズ全17作品の魅力とあらすじを、順番にご紹介します。どの作品も江戸の風情と人々の温かさが感じられる名作ばかりです。

その夜の雪

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シリーズの原点。慶次郎の心に刻まれた哀しき事件。

作品内容・あらすじ
定町廻り同心・森口慶次郎の愛娘・三千代が祝言を前に自害。男に凌辱されたのを苦にしたものだった。復讐の鬼と化し、犯人である常蔵を追い詰める慶次郎。彼の怒りの刃を止めたのは、意外な人物だった。表題作のほか、江戸に生きる人々の切ない人生模様を描いた全7編を収録。

おすすめポイント
表題作「その夜の雪」は、シリーズ全体のプロローグとなる最重要作です。穏やかなご隠居としての慶次郎しか知らない読者は、彼の激しい怒りと深い悲しみに衝撃を受けるかもしれません。ここから全てが始まります。

出版年1994年
小説ジャンル短編集

雪の夜のあと

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シリーズのミッシングリンクを埋める、幻の名作長編。

作品内容・あらすじ
三千代の事件から5年。隠居した慶次郎は、娘を死に追いやった男・常蔵と偶然再会する。復讐の念に再び心を揺さぶられる慶次郎。事件はまだ終わっていなかったのだ。5年前に残された者たちのその後と、慶次郎が過去と向き合い、本当の意味で「その後」を生き始めるまでを描く。

おすすめポイント
慶次郎がなぜ同心を辞めたのか、その経緯と心情が詳細に描かれます。彼の人物像に圧倒的な深みを与えてくれる作品で、これを読むと読まないとではシリーズ全体の感動が大きく変わってきます。

出版年1997年
小説ジャンル長編時代小説
シリーズ名慶次郎縁側日記

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隠居・慶次郎の新たな人生が始まるシリーズ第一弾。

作品内容・あらすじ
根岸の寮番として静かな生活を始めた慶次郎。だが彼の周りには揉め事が舞い込んでくる。空き巣稼業の男、意地っ張りな職人、訳ありの娘など、様々な事情を抱えた江戸の庶民たち。慶次郎は彼らの心に寄り添い、事件の裏に隠された人々の哀歓を解きほぐしていく。

おすすめポイント
お馴染みのレギュラーメンバーが本格的に登場し、物語の世界観が確立される重要な一冊です。ここから読んでも楽しめますが、前2作を読んでおくと、慶次郎の優しさの背景がより深く理解できます。

出版年1998年
小説ジャンル連作短編集
シリーズ名慶次郎縁側日記

再会

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忘れられぬ人と出会う時、人の心は乱れ、物語が動く。

作品内容・あらすじ
十数年ぶりに昔の女と出会った岡っ引の辰吉。「亭主と別れたい」とすがる女に手を貸したことから、とんだ事件に巻き込まれていく。甘い感傷から始まった再会が、辰吉を窮地に追い込む。辰吉の危機を救うため、我らが慶次郎が静かに動き出す。円熟の筆致が冴える人気シリーズ第二弾。

おすすめポイント
表題作「再会」では辰吉が、他の収録作では様々な人物が、過去との邂逅を果たします。人が過去とどう向き合い、今をどう生きていくのかを考えさせられる、味わい深い物語が揃っています。

出版年1999年
小説ジャンル連作短編集
シリーズ名慶次郎縁側日記

おひで

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傷ついた娘の心が、人の優しさでゆっくりと溶けていく。

作品内容・あらすじ
深傷を負い、慶次郎のもとに引き取られた娘・おひで。惚れた男にも捨てられ自暴自棄になっていたが、飯炊きの佐七の献身的な優しさに少しずつ心を開いていく。しかし、再び凶刃がおひでに迫る。行き場のない人間の切ない思いを、慶次郎たちが温かく受け止めるシリーズ第三弾。

おすすめポイント
慶次郎だけでなく、飯炊きの佐七の不器用な優しさが光る一冊です。人との繋がりの中で、傷ついた心が再生していく過程が丁寧に描かれており、読後、温かい気持ちに包まれることでしょう。

出版年2000年
小説ジャンル連作短編集
シリーズ名慶次郎縁側日記

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人生の峠で道を踏み外した者たちに、慶次郎の心は届くか。

作品内容・あらすじ
山深い碓氷峠で、思いがけず人を殺めてしまった薬売りの若者。江戸に逃れ、別人になりすまして生きようとするが、過去を知る者に狙われ、運命の渦に呑み込まれていく。一瞬の過ちで人生が捩れていく人間たちに、慶次郎の慈悲の心は届くのか。好評シリーズ第四弾。

おすすめポイント
表題作「峠」は、シリーズの中でも特にサスペンス色の濃い中編です。人の心の弱さや、一度犯した罪の重さが描かれ、読者を引き込みます。慶次郎の養子・晃之助の同心としての成長も見どころの一つです。

出版年2000年
小説ジャンル連作短編集
シリーズ名慶次郎縁側日記

あの蝮の吉次が所帯持ちに?江戸の町に驚きが走る。

作品内容・あらすじ
意地悪で有名な岡っ引・吉次に惚れるとは、一体どんな女なのか。江戸中の誰もが驚いた吉次の所帯話。一方、吉次の義弟を名乗る不審な男も現れ、事態は思わぬ方向へ。慶次郎やお馴染みの面々を巻き込んだひと夏の騒動を描く表題作「蜩」ほか、全12編を収録。

おすすめポイント
普段は憎まれ役の多い「蝮の吉次」の意外な一面が描かれ、キャラクターの魅力がさらに深まります。軽妙でユーモラスな話から、しんみりとした人情話まで、バラエティに富んだ短編が楽しめる一冊です。

出版年2002年
小説ジャンル連作短編集
シリーズ名慶次郎縁側日記

隅田川

幼馴染の四角関係、そのもつれた糸を晃之助が解きほぐす。

作品内容・あらすじ
長屋で仲良く育った男女四人。だが、長じて男二人が一人の女に惚れたことから、運命の歯車が狂い始める。嫉妬と憎しみの果てに、一人がもう一人を殺めようとする事態に。義理の息子・晃之助の奮闘を、慶次郎が暖かく見守る。ままならぬ人間模様が切ないシリーズ第六弾。

おすすめポイント
この巻では、慶次郎の養子であり後継者である森口晃之助の活躍が光ります。偉大な義父の背中を追いながら、自分なりのやり方で事件に向き合う彼の成長ぶりが頼もしく感じられます。

出版年2002年
小説ジャンル連作短編集
シリーズ名慶次郎縁側日記

やさしい男

罪を背負ってなお憎みきれない、江戸の庶民の現実。

作品内容・あらすじ
理不尽な理由で職を失い、家族を泣かせながら食い逃げに身を落とす男。生き馬の目を抜く江戸の暮らしは、一度つまずいた者には容赦がない。町にあふれる食い詰め人たちの、裏の事情は十人十色。ご存じ「仏」の慶次郎の目に映るのは、罪を背負ってなお、どこか憎みきれない人間ばかり。

おすすめポイント
社会の厳しさの中で、もがき苦しむ人々の姿がリアルに描かれています。単なる勧善懲悪では終わらない、人間の多面性や複雑さを描き出す北原亞以子の真骨頂が味わえるシリーズ第七弾です。

出版年2003年
小説ジャンル連作短編集
シリーズ名慶次郎縁側日記

脇役 慶次郎覚書

人気キャラクターたちの知られざる物語がここに。

作品内容・あらすじ
物語の主役は、慶次郎を支える脇役たち。一本気な岡っ引の辰吉、悪名高いが腕は確かな蝮の吉次、慶次郎に忠実に仕える佐七など、8人の視点からそれぞれの人生と慶次郎への想いが語られる。彼らが抱える過去や葛藤が、本編とは異なる角度から描かれる珠玉の外伝。

おすすめポイント
本編では見られない人気キャラクターたちの内面を深く知ることができる、ファン必読の一冊です。彼らがなぜ慶次郎を慕うのか、その理由が明らかになります。シリーズの合間に読むことで、物語がより一層味わい深くなります。

出版年2003年
小説ジャンル外伝・連作短編集
シリーズ名慶次郎縁側日記

赤まんま

人の心の弱さが道を外させ、苦い涙を流させる。

作品内容・あらすじ
不治の病で逝った幼馴染の霊前で、誓いを立てた簪を見つめる材木問屋の主人。若後家が胸に秘める亡き夫との思い出。秋風に揺れる赤まんまの花だけが、その心の内を知っている。折檻、密通、盗癖。町の噂の裏にある、人々の心の苦しみと悲しみに、今日も慶次郎は静かに耳をすます。

おすすめポイント
表題作「赤まんま」をはじめ、人の心の奥深くに秘められた哀しみや情念を描いた作品が多く収録されています。しっとりとした情緒あふれる物語を読みたいときにおすすめの一冊です。

出版年2004年
小説ジャンル連作短編集
シリーズ名慶次郎縁側日記

夢のなか

理屈じゃ解けぬ江戸の男女の、心のもつれを慈愛で解く。

作品内容・あらすじ
女に食わせてもらう甲斐性なしと笑われても、私にはいつだって優しい人。たとえ夢のなかでさえも…。働かない優男を針仕事で支える娘にも、良縁を笑顔で断る美女にも、胸に秘めた想いがある。失った恋の哀しみが、時に人を思わぬ悪事に走らせる。慶次郎がそんな男女の心の機微に迫る。

おすすめポイント
様々な男女の恋愛模様が描かれた、恋物語集ともいえる一冊。一筋縄ではいかない江戸の恋の形が、切なくも美しく描かれています。慶次郎の孫娘・八千代も登場し、家族の温かさも感じられます。

出版年2005年
小説ジャンル連作短編集
シリーズ名慶次郎縁側日記

ほたる

江戸の市井で泣く人々を、仏の隠居が情けで救う。

作品内容・あらすじ
川面に消えたほたるの光は、移ろう人の心の幻か。幼い異母妹と懸命に生きる貸本屋の男が、愛する妻の借金に戸惑う。悪い男に強請られる女が泣きついたのは、蝮の異名をもつ岡っ引き吉次だった。浮気、暴力、借金の罠。ささやかな幸せを脅かされる人々を、慶次郎が救う傑作シリーズ第十弾。

おすすめポイント
人生の困難に直面し、それでも懸命に生きようとする人々の姿に胸を打たれます。「ほたる」では、再び吉次の意外な優しさが描かれ、彼のファンならずとも必読のエピソードとなっています。

出版年2006年
小説ジャンル連作短編集
シリーズ名慶次郎縁側日記

月明かり

シリーズ初の長編。十一年前の殺人事件の真相に迫る。

作品内容・あらすじ
十一年前、幼い息子の目の前で父親が刺殺された。事件は迷宮入りとなったが、成長した息子は今も犯人を捜し続けている。一方、事件の下手人とされた男の娘もまた、父の無実を信じ続けていた。二つの家族の運命が交錯する時、慶次郎は事件の裏に隠された驚くべき真実に行き着く。

おすすめポイント
シリーズ唯一の長編(『雪の夜のあと』を除く)であり、一つの事件をじっくりと追いかける読み応えのあるミステリーです。過去の事件が現在にどう影響を与えているのか、その構成が見事です。

出版年2007年
小説ジャンル長編時代小説
シリーズ名慶次郎縁側日記

白雨

冴えわたる円熟の筆。江戸の人情を描ききるシリーズ第十二弾。

作品内容・あらすじ
にわか雨のように、人の心にも予期せぬ出来事が訪れる。福笑いの面が結んだ不思議な縁、亡き夫への想いを凧に託す女、そして慶次郎自身の心に去来する過去の記憶。日々の暮らしの中にある小さな幸せや哀しみを、慈しむように描き出す全8編を収録。追悼・北原亞以子。

おすすめポイント
作者・北原亞以子さんの晩年の円熟した筆致が光る一冊です。派手な事件は起こりませんが、人の心の機微を丁寧にすくい上げた物語は、深い余韻を残します。静かに物語を味わいたい方におすすめです。

出版年2008年
小説ジャンル連作短編集
シリーズ名慶次郎縁側日記

あした

どんなに辛い今日があっても、人は明日を信じて生きていく。

作品内容・あらすじ
小さな幸せだけを望んでいた。しかし、泥棒に身を落とさねばならなかった男。愛する人に送るはずだった恋文が、思わぬ騒動を巻き起こす。人生に迷い、立ち止まってしまった人々が、慶次郎との出会いをきっかけに、再び「あした」へ向かって歩き出す。希望の光が感じられるシリーズ第十三弾。

おすすめポイント
苦しい状況の中でも希望を失わずに生きる人々の姿が、力強く描かれています。読後、前向きな気持ちになれる物語が多く、心が疲れた時に読むと、そっと背中を押してくれるような一冊です。

出版年2012年
小説ジャンル連作短編集
シリーズ名慶次郎縁側日記

祭りの日

これぞ江戸人情の華。若者の大志を汚す者は許さない。

作品内容・あらすじ
祭りの日に起きた小さな事件が、やがて大きな陰謀へと繋がっていく。目安箱に投じられた一通の書状、黒髪に秘められた女の覚悟、そして御茶漬屋を舞台に繰り広げられる人情劇。江戸の町を愛し、そこに生きる人々を愛する慶次郎の、静かな怒りが悪を討つ。シリーズ第十四弾。

おすすめポイント
慶次郎の正義感や、不正に対する毅然とした態度が際立つエピソードが多く収録されています。普段は穏やかな慶次郎が見せる、元同心としての矜持に胸がすく思いがします。

出版年2013年
小説ジャンル連作短編集
シリーズ名慶次郎縁側日記

雨の底

降り続く雨のように、人の心にも晴れない想いがある。

作品内容・あらすじ
しとしとと降り続く雨の底で、人々はじっと身を寄せ合い、それぞれの想いを巡らせる。一人息子を案じる親心、長い旅路の果てに見つけたもの、そして、人の心の奥底に横たわる、誰にも言えない秘密。雨がもたらす静寂の中で、慶次郎は人々の心の声に耳を傾ける。

おすすめポイント
「雨」をモチーフにした、しっとりとした情緒あふれる物語が中心です。登場人物たちの内面が深く掘り下げられており、物語の世界に静かに没入したい読者に最適の一冊です。

出版年2013年
小説ジャンル連作短編集
シリーズ名慶次郎縁側日記

乗合船

北原文学の集大成。傑作シリーズ、感動の最終巻。

作品内容・あらすじ
人生は、様々な人間が乗り合わせる一艘の船のよう。春の雪、夏の菖蒲、そして冬の訪れ。季節が巡るように、慶次郎の周りの人々にも出会いと別れが訪れる。慶次郎が縁側で見つめ続けた江戸の町と人々の暮らし。その全てが愛おしくなる、シリーズを締めくくるにふさわしい物語。

おすすめポイント
シリーズ最終巻。慶次郎のこれまでの人生が凝縮されたような、集大成ともいえる内容です。長年シリーズを読み続けてきた読者にとっては、万感胸に迫るものがあるでしょう。感動のフィナーレです。

出版年2014年
小説ジャンル連作短編集
シリーズ名慶次郎縁側日記

ドラマ「慶次郎縁側日記」の順番と作者の魅力

ドラマ「慶次郎縁側日記」の順番と作者の魅力
イメージ画像:エンタメMAG

次に、高橋英樹さん主演で人気を博したテレビドラマ版について解説します。小説で描かれた江戸の情緒や人々の温かさを、実力派俳優たちが見事に体現しており、小説ファンはもちろん、時代劇が好きな方なら誰もが楽しめる作品に仕上がっています。小説とはまた違った魅力を持つ映像作品の楽しみ方や、知っておくと便利な視聴情報をご紹介します。活気あふれる江戸の町並みと、魅力的なキャストが織りなす物語をぜひお楽しみください。

テレビドラマのあらすじとキャスト

テレビドラマ版「慶次郎縁側日記」は、NHK総合の「金曜時代劇」および「木曜時代劇」枠で、2004年から2006年にかけて全3シリーズ(各10話、合計30話)が放送されました。主演の高橋英樹さんが演じる森口慶次郎は、その温厚な人柄と、時に見せる元同心としての鋭さが絶妙に表現されており、まさに「仏の慶次郎」という言葉がぴったりのハマり役として、多くの視聴者から絶大な支持を得ました。

物語の基本的な設定は小説に準じており、慶次郎が娘・三千代を不幸な事件で失い、その3年後に隠居して根岸の寮番となるところから始まります。江戸で起こる様々な事件の解決に乗り出しながら、心に傷を負った人々の孤独にそっと寄り添い、癒していく、一話完結の心温まる人情時代劇です。

脇を固めるキャストも、遠藤憲一さん、奥田瑛二さん、石橋蓮司さん、かたせ梨乃さんといった実力派が揃い、重厚な人間ドラマを織りなしています。特に、安達祐実さんが演じる嫁の皐月が務めるナレーションは、物語に優しい彩りを加えています。

主なキャスト

役名俳優名役どころ
森口慶次郎高橋英樹主人公。元南町奉行所同心のご隠居。通称「仏の慶次郎」。
森口皐月安達祐実晃之助の妻で慶次郎の義理の娘。本作の語りも担当する。
森口晃之助比留間由哲慶次郎の養子で後継者。現役の定町廻り同心。
辰吉遠藤憲一慶次郎を「親分」と慕う手先(岡っ引)。一本気な性格。
蝮の吉次奥田瑛二腕利きだが金に汚いと評判の岡っ引。慶次郎とは旧知の仲。
佐七石橋蓮司慶次郎の身の回りの世話をする、口は悪いが忠実な飯炊き。
お登世かたせ梨乃慶次郎行きつけの料理屋「花ごろも」の美しき女将。

テレビドラマの配信やDVD情報

「あの感動をもう一度味わいたい!」という方のために、ドラマ版の視聴方法を詳しくご紹介します。現在、いくつかの方法で視聴が可能です。

DVD-BOX

ドラマ「慶次郎縁側日記」は、第1シリーズから第3シリーズまで、全シリーズがそれぞれDVD-BOXとして販売されています。本編映像はもちろん、特典映像として出演者インタビューなどが収録されている場合もあり、ファンにとっては見逃せないアイテムです。ご自宅でじっくりと作品の世界に浸りたい方には、DVDでの視聴が最もおすすめです。

「慶次郎縁側日記 DVD-BOX 全3巻セット」も販売されており、全シリーズをまとめて手元に置くことができます。詳細はNHKエンタープライズの公式サイトなどでご確認ください。

動画配信サービス

動画配信サービスでの視聴については、状況が変動的ですが、最も可能性が高いのはNHKの公式サービスです。

NHKオンデマンドでの配信

過去のNHKの番組を視聴できる「NHKオンデマンド」では、時期によって「慶次郎縁側日記」シリーズが配信されることがあります。「見放題パック」に加入していれば、いつでも好きな時に視聴可能です。ただし、配信ラインナップは常時変動するため、視聴を希望される方は、事前に公式サイトで配信状況を確認することをおすすめします。

また、後述する再放送のタイミングに合わせて、放送後一定期間「NHKプラス」で見逃し配信が行われることもあります。

テレビドラマの再放送予定について

「慶次郎縁側日記」は根強い人気を誇る名作時代劇であり、これまでにもNHK総合やBSの「時代劇セレクション」といった枠で度々再放送されています。

そして、直近ではシリーズ第3弾である「慶次郎縁側日記3」の再放送が予定されています。

「慶次郎縁側日記3」再放送情報

  • 放送予定:2025年4月27日(日)から毎週日曜日
  • 放送時間:午前6時10分~午前6時53分
  • 放送局:NHK総合テレビ

(参照:NHKドラマ公式サイト
※放送日時や内容は変更になる可能性があります。最新の情報は公式サイトでご確認ください。

休日の朝のひとときに、心温まる人情時代劇を楽しんでみてはいかがでしょうか。リアルタイムでの視聴が難しい場合でも、放送後1週間は「NHKプラス」で見逃し配信を視聴できる可能性がありますので、そちらも合わせてチェックしてみてください。

作者・北原亞以子のプロフィールと作風

作者・北原亞以子のプロフィールと作風
イメージ画像:エンタメMAG

最後に、この物語を生み出した不世出の作家・北原亞以子さんについて、改めてご紹介します。

北原亞以子(きたはら あいこ)さんは、1938年、東京生まれの小説家です。広告代理店勤務などを経て、1969年に作家としてデビューしました。長年の作家活動を経て、1993年に『恋忘れ草』で第109回直木三十五賞を受賞し、時代小説、特に江戸の市井に生きる人々を描く名手としての地位を不動のものとしました。その他にも、『深川澪通り木戸番小屋』で泉鏡花文学賞を受賞するなど、数々の文学賞に輝いています。

彼女の作品の最大の魅力は、歴史上の偉人や大事件ではなく、名もなき庶民の日常や感情に光を当て、その営みを丁寧に描き出している点にあります。社会の片隅で、決して平坦ではない人生を懸命に生きる人々の喜びや悲しみ、意地や優しさを、温かくも鋭い眼差しで見つめ、読者の心に深く響く物語を数多く紡ぎ出しました。「慶次郎縁側日記」シリーズは、まさにその真骨頂ともいえる、彼女の代表作です。

北原さんの作品を読むと、江戸時代が、教科書の中の遠い過去ではなく、私たちと同じように悩み、笑い、恋をする人々が生きた、地続きの時代であったことを実感させてくれます。


この記事のまとめ

今回は、「慶次郎縁側日記」の小説とドラマ、それぞれの楽しむ順番について詳しく解説しました。物語の背景や、主人公・慶次郎の過去を知ることで、彼の言葉一つひとつの重みや、登場人物たちの行動の裏にある想いを、より深く感じ取れるようになるはずです。

小説でじっくりと江戸の人情の機微に触れるもよし、ドラマで活気ある江戸の世界観と実力派俳優たちの名演を味わうもよし。あなたに合った方法で、元同心・森口慶次郎が紡ぐ、優しくもほろ苦い江戸の物語の世界に、ぜひ浸ってみてください。きっと、あなたの心に温かい灯りをともしてくれることでしょう。

  • 小説は基本的に出版順に読むのが最もおすすめ
  • 最初にシリーズの起点となる『その夜の雪』と『雪の夜のあと』を読むと物語がより深く楽しめる
  • テレビドラマは高橋英樹さん主演で全3シリーズが放送された不朽の名作
  • ドラマは全シリーズのDVD-BOXが販売されておりいつでも視聴可能
  • 2025年4月からシリーズ3の再放送がNHK総合で予定されている
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この記事を書いた人

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